言葉の力を強く育てよう


バイリンガル育児を成功させるには、子どもが生まれてから6歳までの環境が大切です。この時期の子どもは言葉を習得する最適期にあり、適切な環境があれば、二カ国語でも三ヶ国語でも何の苦労もなく身につけることができます。

しかし、その一方で、この時期に必要な言葉のインプットが不足すると、将来の学力や社会生活の基礎となる「言葉の力」が弱い子どもに育ってしまいます。

子どもの言葉は、周囲から刺激を受けることによって発達していきます。子どもの周りに言葉という刺激が少なければ、言葉は生きるためにさして必要ないものとなって、子どもの頭は言葉に対してあまり反応しないように育ちます。

大切なのは、頭脳の基本的な回路の90%ができあがる6歳までに豊かな言葉の刺激を与えること。もちろん6歳を過ぎてからの働きかけも重要ですが、頭脳の基本的な土台や方向性が6歳までに築かれるということを知りましょう。

お母さんの言葉が最良の刺激

子どもの言葉を育てる入り口はお母さんのやさしい語りかけです。お母さんが「かわいい◯◯ちゃん、おはよう」と話しかけると、赤ちゃんはお母さんの顔をじっと見て「アウゥ、アウゥ」と答えます。赤ちゃんはお母さんの言葉か別の人の言葉かが、生まれた直後から分かるのです。

考えてみれば、これは当然のことです。赤ちゃんはお腹の中にいる時からずっとお母さんの声を聞いてきたのです。さらに言えば、お母さんの声は胎内振動となってお腹の赤ちゃん全体を刺激し続けてきたのです。

子どもにとってお母さんの言葉ほど影響力が大きい刺激はありません。でもこのことに気づいていない方が非常に多いのです。子育て中のお母さんはもっとたくさんの愛情溢れる言葉を子どもに語りかけてあげましょう。

お母さんの言葉は心を育てる

お母さんの語りかけは言葉の発達だけでなく、子どもの性格、情緒、感性、人柄を育てる大切な働きがあります。もともとお母さんが赤ちゃんに話しかける場合「用事」があってするよりも、自分の「愛情」や「感動」などの心を伝えたいときのほうが多いものです。言葉は人と人の心をつなぐ橋として生まれたものですから相手が乳幼児のときはなおさらです。

「○○ちゃんはお母さんの宝物よ」「○○ちゃんが生まれてきてくれて本当にありがとう」お母さんのそんな言葉は「自分は愛されている」という自信を子どもの心に育てます。自分は親から愛され、信頼されていると子どもに感じさせることが、子どもの心を大きく、強く、明るく、前向きに育てる秘訣です。

語りかけは日本語で

子どもに語りかける言葉は、お母さんにとって一番馴染みがあり、自然に気持ちを伝えられる「日本語」で行いましょう。毎日子どもに語りかけ、絵本を読んであげれば、どの子も2~3年で日本語を母国語として身につけます。

母国語は子どもの言語発達の基盤となる大切なものです。この土台が不安定では第二言語の高度な発達は期待できません。特に日本語環境が少ない海外においては、母国語の育生を最優先に考えて育児に取り組む必要があります。乳幼児期に言葉のインプットが少ないと、日本語も英語も母国語として育たず、学力もアイデンティティも失うというケースもあるので要注意です。

語りかけは実況中継で

「子どもにどう語りかけてよいのか分からない」というお母さんがいます。そんな時は「実況中継」をしてみましょう。お母さんがしていることや考えていること、子どもがしていることを言葉にするのです。

「ママは今ご飯をつくっているよ」「○○ちゃんはお腹が減っているのかな」「○○ちゃんが笑ってくれるとママうれしいわ」「ごめんね、気持ち悪かったね。オムツを取りかえてあげるね」

こんな要領で心に思っていることを言葉にして子どもに語りかけてあげればいいのです。

お母さんの語りかけは子どもの言葉と心を豊かに育てる栄養源です。言葉の栄養はいくら与えても与えすぎる心配はありませんから、たっぷりとやさしい言葉をかけてあげましょう。バイリンガル育児についてのご質問、ご相談はTLC for Kidsまでご連絡ください。